不倫の証拠集め|難しい不貞行為の立証のために重要なこと

文責:所長 弁護士 福島晃太

最終更新日:2025年01月07日

 夫や妻の不倫を理由に慰謝料請求するには、「不倫の証拠」が必要不可欠です。

 ただ、具体的にどのような証拠が有効なのか、どうやって証拠を集めればいいかは、いざ考えてみると分からないことも多いでしょう。

 今回は、不倫の証拠になるものとその集め方について詳しく解説します。

1 不倫の証拠は「肉体関係」の証明が大切

 不倫は、法律的には「不貞行為」と呼ばれるもので、配偶者がいるにも関わらず配偶者以外と性的関係(肉体関係)を持つこととされています。

 肉体関係がなければ不貞行為が全く認められないわけではありませんが、原則としては肉体関係が必要です。

 したがって、もし慰謝料請求をしたいのであれば、不倫の証拠で最も重要なものは「不貞行為(肉体関係)があったことを証明できるもの」です。

 以下では、具体的にどのようなものが不貞行為の証拠となるのか、どう集めればいいのかをご紹介します。

2 不倫の証拠の一覧と証拠収集の注意点

⑴ 代表的な不倫の証拠一覧

  まずは不倫の証拠になる可能性がある代表的なものを一覧で確認します。

・ラブホテルに出入りする写真、動画等

・肉体関係があったと推測できる内容のメールやLINEのトーク、Facebookメッセンジャー等

・携帯の通話記録

・配偶者や不倫相手のブログ、SNS

・日記やスケジュール帳、カレンダー等

・配偶者が利用している交通系ICカードやETCカード等

・ドライブレコーダーの映像、GPSの移動履歴・位置情報

・ラブホテルの領収書やクレジットカードの明細書等

・浮気、不倫の自認書

・興信所・探偵等の調査報告書

・性行為中の写真や動画等

・友人や第三者の証言(「不倫の話を何度もされた」など)

 直接的な証拠となる性行為中の写真や動画等以外は、基本的にはどれも単体では証拠として弱いため、様々な証拠を組み合わせることで不貞行為を推認させることになります。

⑵ 証拠収集の注意点

 それぞれの証拠をご紹介する前に、共通して証拠になりにくいものを簡単にご説明しておきます。

 

① 違法に集めた証拠

 不倫の証拠は、通常内密に集めるものです。

 ただ、注意してほしいのは、配偶者や不倫相手にもプライバシーがあるということです。

 例えば携帯のロックを外して勝手に中身を確認したり、日記をこっそり見たり、極端な例では盗聴・盗撮をしたりと、証拠を集めるためにした行為がプライバシー侵害になってしまうケースは少なくありません。

 こうしたプライバシー侵害は、相手から損害賠償請求をされる可能性があるほか、裁判でも違法収集証拠として排除されてしまう可能性があります。

 ただ、浮気・不倫は他に証拠を集める方法がないため、現実的にはスマホの画面や日記を撮影する程度なら証拠として認められるケースは多くあります。

 

② 改ざんが容易な形態の証拠

 デジタルデータは改ざん・加工しやすいため、証拠にならないことがあります。
 訴訟でも、相手方から改ざんを主張されることは少なくありません。

 できるだけ、デジタルのコピーではなく、写真撮影等で証拠を保存するようにしましょう。

3 証拠の集め方と証拠価値

 次に、それぞれの証拠の具体的な収集方法と証拠価値(証明力の程度)について、ご説明します。

⑴ ラブホテルに出入りする写真、動画等

 配偶者と不倫相手が二人でラブホテルに出入りするところを撮影した写真や動画は、探偵等に頼むと撮影してくれる定番の証拠です。

 ラブホテルは、性行為・性交類似行為が行われる前提の場所ですので、肉体関係があることを推認させる証拠となります。

 ただし、一人で出入りしている写真では肉体関係の相手がいたと証明できませんので、二人揃って出入りしている写真が有効です。

 ラブホテル内での写真・動画や録音ももちろん有効です。

 性行為自体が写っていなくても、例えば上半身裸の写真や、バスローブを着た写真などは一定の証拠価値があります。

 一方で、写真や動画であっても、屋外において普通に2人で写っているだけのものや、デートスポットでのツーショットなどでは、不倫の証拠としては弱いです。

 このような写真・動画の証拠は、ご自身ではつかめないことも多いので、探偵や興信所に調査を依頼するのがお勧めです。

⑵ メールやLINEのトーク、Facebookメッセンジャー等

 配偶者と不倫相手のメールのやり取りやLINEのトーク、Facebookのメッセンジャー等は、不倫の証拠として使われることがとても多く、訴訟でもよく登場します。

 ただし、メールやLINEのみで「肉体関係」を証明できることは少ないです。

 とはいえ、「早く会いたい」や「愛してる」などの肉体関係に直結しないメールやLINEでも完全に無価値なわけではありません。
 こういった密接な関係性にあることの証拠にはなるため、他の証拠と合わせることで、肉体関係があったことを推認させることもできます。

⑶ 携帯の通話記録

 配偶者とご自身の携帯電話の契約をファミリー契約にしていて、ご自身が契約者となっているときには、配偶者の通話履歴も取り寄せることができます。

 夫や妻が不倫している場合には、夜中などの不自然な時間に特定の電話番号の相手と長電話していることがよくあります。

 そのような場合、通話明細から不倫の事実を推測することが可能です。

 一方で、不倫相手の素性がわからないときには、弁護士会照会を使い、相手の携帯電話番号から氏名や住所を調べられるケースもあります(弁護士法23条の2)。

⑷ 配偶者や不倫相手のブログやSNS

 配偶者や不倫相手のブログやSNSから不倫を推測できるケースも多いです。

 たとえば、配偶者が「仕事がある」などと言って出ていき、家にいなかった日に不倫相手のブログを見ると、「恋人と過ごした」ことが書いてある場合などもありますし、配偶者が贈ったプレゼントが不倫相手のブログにアップされているケースなどもあります。

 ただ、ツーショットなどが掲載されていれば問題ないのですが、匿名で行われるブログやSNSでは、本人であることの確認も必要になります。

 ブログやSNSを証拠として保存するときは、URLだけでなく、内容を印刷しておくことをおすすめします。

 このとき、できれば日付も入るように印刷しましょう。

⑸ 日記やスケジュール帳、カレンダー等

 配偶者が日記やスケジュール帳をつけている場合、その中身によって不倫を推測できることがあります。

 配偶者が不倫相手と会ったことやそのときの状況を書いていたり、不倫相手と会う日に特別なマークをつけていたりすることが多いからです。

⑹ 配偶者が利用している交通系ICカードやETCカード等

 配偶者が電車やバスの交通ICカードを利用している場合、その利用履歴が不倫の証拠になる場合があります。

 たとえば会社帰りに頻繁に特定の駅で下りていたり、休日出勤があると言っていた日に特定の駅に通っていたりすると、不倫している可能性が高まります。

 また、不倫相手の住所が不明な場合には、下車駅の近隣に住んでいることがわかるので、調べるきっかけにもなります。

 同様に、高速道路のETCカードが不倫の証拠になるケースもあります。
 ETC利用照会サービスや、一部のサービスエリア・パーキングエリアにあるETC利用履歴発行プリンターを使うことで、ETCカードの利用履歴を確認できます。

⑺ ドライブレコーダーの映像、GPSの移動履歴・位置情報等

 先ほどの交通系ICカードやETCカードと同様、移動履歴から不倫相手と会っていたことを証明するものです。

 例えば、複数回ラブホテルに行き、数時間滞在していたことなどのGPSログが証拠の一つとなって不貞行為が認定された裁判例もあります(東京地判平成27年3月17日 平成25年(ワ)第20149号)。

 こうしたGPSの位置情報等だけでは、一人で移動していたと反論されることもありますが、ご紹介している他の証拠と組み合わせることで、不貞行為を推認させられる場合もあるということです。

 ご自宅の車であれば、カーナビに移動履歴が残っていないか、ドライブレコーダーの映像はないか等を確認してみましょう。

 iPhoneやスマホ等のGPSログも証拠となりますが、これらはやはりプライバシー侵害に注意する必要があります。

⑻ 領収書やクレジットカードの利用明細など

 配偶者と不倫相手がデートするときには、いろいろなお金が発生します。

 レストランで食事をすることもありますし、テーマパーク、映画館などに入場することもあります。
 もちろんラブホテルを利用することも少なくないでしょう。

 これらの領収書・レシートや半券なども不倫の証拠になります。

 また、仮に領収書やレシートを破棄されていても、クレジットカードで支払いをしたときには、利用明細を証拠にすることが可能です。

⑼ 浮気・不倫の自認書、示談書

 浮気相手や配偶者に事実確認をするとき、不倫を認めたら「不貞行為をしました」という内容の自認書を書いてもらえることがあります。

 こうした浮気・不倫の自認書は、後に慰謝料請求や離婚裁判をするときの証拠として利用できます。

 例えば配偶者に自認書を書かせて不倫相手に請求するときや、その逆に不倫相手に自認書を書かせて配偶者本人に請求するときでも一定の証拠となります。

 なお、自認書を書いたその人に請求する場合、「もう自白しているから証明なんていらないのでは?」と思われるかもしれませんが、仮に自認書があったとしても、それ自体で訴訟上の自白にはなりません。

 場合によっては「無理やり嘘を書かされた」などと自認書に書かれた内容を否定されることもあり、相手が争ってくる場合、やはり他の証拠とあわせて立証する必要があります。

⑽ 興信所の調査報告書

 自分の力だけでは肉体関係を推認させる証拠を集められない場合は、興信所や探偵に依頼して尾行調査をしてもらう方法もあります。

 これまでご紹介してきた証拠のうち、特にラブホテルに出入りする写真等は、ご自身で撮影するのは難しいことも多いでしょう。

 興信所がこうした証拠となる場面を写真とともに報告書にすれば、それは裁判でも利用できる証拠となります。

 尾行調査してもらうことにより、不倫相手の氏名や住所、勤務先などが判明することもあるので、証拠が足りないときや不倫相手の素性が不明な場合には、興信所・探偵等に依頼するのも一つの手段です。

4 証拠が揃ったら弁護士に相談を

 不倫を証明したければ、肉体関係を証明できる証拠をたくさん集めましょう。

 手元にある程度証拠が揃ったら、弁護士のところまでご持参ください。

 夫や妻に対する離婚請求や不倫相手への慰謝料請求などの具体的なステップに進むことができます。

「怪しい」と感じたらまずは不倫の証拠を探し、弁護士の力を使って解決につなげましょう。

 証拠を出すタイミングにつきアドバイスを貰えるだけでも、あなたの側が有利になります。

 不倫慰謝料の請求をお考えの方は、当法人にぜひ一度ご相談ください。

PageTop